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大体、息の根が止まっている“コイ”が喋れるものか。おれは奏の背後に迫る。
「んで、奏。単刀直入に言えば、お前の趣味は人殺しってことでオーケー?」
「何が人殺しだ。俺はコイが好きなだけで……」
「コイはお前が考えた隠語みたいなのだろ。水中に沈んでいるのも、そこらに転がっているのも、全部人の死体じゃねえか」
奏はおれから目線を逸らす。今、彼の瞳には明確な怒気が浮かんでいた。
恐らく、“ショップ”もペットショップやホームセンターに設置されているペットコーナー、養鯉場などの意ではない。きっと人身売買が行われる場所とか……その辺りを指すのだろう。
「くそ。長年の付き合いなら……築夜なら俺の趣味を分かってくれると思っていたのに……! コイは“俺が殺した奴の死体”を略したんだよ」
「おれがころしたやつのしたい……で、コイか。随分と大雑把な略し方だな」
「ああうるせぇ! てめぇとは絶交だ、一昨日来やがれ!」
会社で自ら「俺のマイブームを……コイ達を紹介したいんだ!」って満面の笑みで話し掛けてきたくせに。何だよその態度は。二人で食おうと購入してきたお菓子やジュース、その他諸々を入れたビニール袋をひっくり返してやりたい、目の前で。
……そういえば、シツやハッカも略語なのだろうか。シツは紅く染まった人工池に見窄らしい服を着用した女性の死体。ハッカは真っ白な骨と化しており、男女の区別も付かない。恐らく……刺殺の略でシツ、白骨化の略でハッカなのだろう。
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