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1話 異形の血
因果。
人はそれを、いい意味にも悪い意味にも使う。
因果応報とは、よく謂ったものだ……。
いつもと同じように就寝しようとベッドに体を横たえた時のこと、見えない何者かに体を喰い千切られるような痛みが、全身を襲った。
「ーーーーーっ!!」
痛みと表現するにはあまりにも拙く、壮絶な責め苦に思考が埋め尽くされ、痛み以外はなにも考えられない、それほどの激痛だった。
今にも体がバラバラに砕け散ってしまいそうな痛みが体中を駆けめぐり、毛穴という毛穴が開き、冷汗が吹き出る。頭皮が悸いて髪が逆立ち、鼻血が流れだし、痙攣が走る。
噛み締めた歯にヒビが入り、歯茎から血が迸った。
痛くて熱くて痛くて、黙って正気など保てない。
まるで熔けた鉛を頭に直接流し込まれるようで、髪を振り乱し、私はさながら狂った獣のように暴れまわった。
「うあ゙あああああああぁぁーーっ!!」
蹴散らしたシーツが散り散りに破れ、噛み締めた枕は大きく引き裂けて、裂け目からは白い白い羽毛がたっぷりと床に溢れて積もっていく。
15歳の冬の夜。三日三晩の高熱に魘されながら、私は死を覚悟した。
そして同時に、生きたいとも、強く願った。
たとえ、どんな姿になろうとも『生きていたい』と、迫りくる死の闇の淵より心の底から願った。
……願いは無事に通じ、私は生き永らえたが、
その代わりに人間としての機能を永久に失っていた。
これで良かったのか、
あの時、人のまま死んだ方がよかったのかどうかは……今でもよく判らないままだ。
まあ何にしろ…これは私の終わりであり、新たなる始まりの物語である。
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