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「田宮くん。来週の火曜と水曜は暇か?」
田宮あすか。それが私の名前だ。
部長に名前を呼ばれて、私はドキッとして実験器具のビーカーを落としそうになった。
「ら、来週ですかっ? 来週ってもう夏休みですよね?」
「そうだよ。25日と26日だ。暇か?」
何故二日間なんだろう……。
それって、泊まり?
「もしかして、実験合宿ですかっ?」
「うん。今回は準備が一日がかりになりそうだし、実験結果は夜にならないと分からないんだ。機材もたくさん運びたいしね。ソロキャンもいいけど、俺はもう三年だし、どうせなら部活の仲間と最後の夏の思い出を作りたいと思ってさ。どうかな」
部長とキャンプ!
私は足の裏にバネがついたみたいに飛び跳ねたくなった。
「い、行きたいですっ! 是非とも!」
「良かった。田宮くんならそう言うと思ったんだ」
部長が嬉しそうに笑う。
部長はこの笑顔が素敵なのだ。うっとりしちゃう。
「やー本当に助かった、荷物運びがいてくれて。これで思い切り実験できるよ」
少々実験への愛が強すぎて、正直すぎる言動なのが悲しいけど。
部長の興味は化学だけ。
部員の私は、ただの荷物運びとか雑用係だとしか思われていない。
それでもいいから一緒にいたいと思っちゃう私はとんだドMだと思う……。
「行き先と時間は後でメールしよう。集合場所はA駅のバス停1番乗り場だ」
「了解です!」
私はウキウキしながら机にビーカーを並べる。
実験合宿なんて初めて。ワクワクしちゃう。
でも、待ってよ。
泊まりでキャンプって。
それって、もしかして……部長と私が同じテントで二人きりの夜を明かすっていうこと⁉︎
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