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「危ない、田宮くん!」
部長の声でハッとした瞬間、私はビーカーから手を離してしまった。
ビーカーが落ちて、床で割れる!
と思って目を瞑ったけど、ビーカーは間一髪で部長がキャッチしていた。
「大切な実験器具が、危ないところだった……」
「ごめんなさい、部長!」
「俺じゃなくて、ビーカーにごめんなさいだろ、田宮くん」
部長が大真面目にビーカーを突き出す。
「ご、ごめんなさい、ビーカーさん!」
私は疑問を感じながらもビーカーに頭を下げた。
ビーカーに嫉妬。部長の手に包まれて、愛されているビーカーが羨ましい。
ああ、ビーカーになりたい人生だった。
って、ビーカービーカー言い過ぎ。何なのよビーカーって。あ、実験器具か。
「素直でよろしい」
すると、部長の手が突然、私の頭をよしよしと撫でた。
キューン! あいたたた、胸がキュンとなりすぎて心筋梗塞!
部長はいつもこうやって無自覚に私を殺そうとするからヤバい。
「今度の合宿キャンプ、死なないようにしなくちゃ……」
「何を言ってるんだ、田宮くん。そんな危険な実験はしないぞ⁉︎」
私の覚悟も知らずに、部長は素敵などんぐり眼をパチパチと瞬きさせた。
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