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「誰?助けてくれたって、何?」
「私ね、6歳の時に誘拐されたの」
「は?ほんまに言うてるん?」
「本当。知らない人に連れて行かれて。でも、その時、違う事件の捜査でその犯罪者集団?半グレ?みたいな人を調べてた刑事さんが、そのアジトに潜んでて」
「助けてくれたん?」
「うん。2人だけで。怖い人いっぱいいたのに、全員捕まえて」
「ヒーローやん」
「うん」
「で、その刑事さん探してるんやな」
「1人は自殺して、もう1人は行方不明」
「は?自殺?行方不明?」
「物騒な話っすね」
と、それまで黙って聞いていた嶋が言った。
「何か事件絡みっすか?」
「よくわからない。調べたけど、元同僚の人とかにも会って聞いたんだけど、みんな言葉を濁して、何も教えてくれないんだ」
「探してるってことは、お嬢はその行方不明になった方の刑事さんを探してるんやな?」
「そうだよ。私を抱きかかえて、悪い人から守ってくれた人」
その時、嶋の携帯が鳴った。嶋は画面を確認すると、素早くその電話に出た。
「あ、ボス。もしもし。あ………え?今からっすか?いえ、大丈夫です。………はい、わかりました。すぐに行きます」
「ボスから呼び出し?」
「はい。俺、いくらっすかね?」
と、嶋は立ち上がりながら、自分の前のテーブルを見渡した。
「いいよいいよ。今日はうちのおごりや」
「まじっすか。ありがとうございます。じゃ、行ってきます」
と、嶋は急いで店から出て行った。
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