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「おっと、あぶないあぶない」
と、ゆきは嶋から瑠美を離した。
「大丈夫、大丈夫。お嬢、落ち着いて。とりあえず、お水飲もうか」
瑠美は、ゆきが差し出してくれた水のコップではなく、まだ半分残っているチューハイのグラスをつかむと、それをぐっと口に入れた。
「あぁ、あかんあかん」
ゆきが瑠美からチューハイのグラスを奪い取ったが、もうチューハイは残っていなかった。
そして瑠美はまた嗚咽し始めた。
「酒癖わるっ!」
と、ゆきは笑った。それから、「よしよし」と瑠美の背中をさすった。
「なんか、お嬢、溜め込んどるんやな。ストレス発散とかしてないんやろ?自分の中だけでは消化できひんもんがあるんやったら、ちゃんと吐き出さんとあかんねんで」
瑠美は、うんうんと頷くと、大将が差し出してくれたティッシュ箱を受け取った。
「ほら、落ち着いて、深呼吸」
ゆきの言葉に、深呼吸しようとした瑠美だったが、また涙がどっと溢れてきたので、ティッシュで顔を押さえた。
「あかんか。まぁ、そしたら、泣くだけ泣いちゃえ。付きおうたるわ」
瑠美の涙はなかなか止まらなかった。ずいぶん時間が経って、3人の他にはお客さんも数人になった頃、ようやく涙が止まった瑠美はテーブルに頭を付けた。疲れ切ってしまって力が全く入らなかった。そんな瑠美の背中を、ゆきは優しくさすっていた。
「ゆきちゃん、私ね、見つけたいの」
ふと、瑠美がつぶやくように言った。
「何を?」
「私を助けてくれた人」
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