3/7
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
「おっと、あぶないあぶない」 と、ゆきは嶋から瑠美を離した。 「大丈夫、大丈夫。お嬢、落ち着いて。とりあえず、お水飲もうか」 瑠美は、ゆきが差し出してくれた水のコップではなく、まだ半分残っているチューハイのグラスをつかむと、それをぐっと口に入れた。 「あぁ、あかんあかん」 ゆきが瑠美からチューハイのグラスを奪い取ったが、もうチューハイは残っていなかった。 そして瑠美はまた嗚咽し始めた。 「酒癖わるっ!」 と、ゆきは笑った。それから、「よしよし」と瑠美の背中をさすった。 「なんか、お嬢、溜め込んどるんやな。ストレス発散とかしてないんやろ?自分の中だけでは消化できひんもんがあるんやったら、ちゃんと吐き出さんとあかんねんで」 瑠美は、うんうんと頷くと、大将が差し出してくれたティッシュ箱を受け取った。 「ほら、落ち着いて、深呼吸」 ゆきの言葉に、深呼吸しようとした瑠美だったが、また涙がどっと溢れてきたので、ティッシュで顔を押さえた。 「あかんか。まぁ、そしたら、泣くだけ泣いちゃえ。付きおうたるわ」 瑠美の涙はなかなか止まらなかった。ずいぶん時間が経って、3人の他にはお客さんも数人になった頃、ようやく涙が止まった瑠美はテーブルに頭を付けた。疲れ切ってしまって力が全く入らなかった。そんな瑠美の背中を、ゆきは優しくさすっていた。 「ゆきちゃん、私ね、見つけたいの」 ふと、瑠美がつぶやくように言った。 「何を?」 「私を助けてくれた人」
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!