5/7
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
「優しい」 「まぁ、圭ちゃんまだ給料安いからなぁ」 ゆきは少し残っていたハイボールを飲み干すと、大将におかわりを頼んだ。 「優しい目をしてたんだよ」 「あぁ、その刑事さん?」 「幼い頃の記憶のはずなのに、今でもはっきり覚えてるんだよ。優しくて、強くて」 「でも、なんでその刑事さんを探したいん?探してどうしたいん?」 「どうしたいんだろう。わからない。はじめはね、きちんとお礼が言いたいなって思ったんだ。中学1年の時に、その人がいた警察署に行って。でも、警察官って、異動があるでしょ?だから、そこにはもういなくて。でも、その人の名前を出すと、みんな妙な顔をするの。そんな人知りません、関わりたくありません、みたいな態度をとるの。でも、中学生の私には、それ以上探しようがなくて」 瑠美は、また溢れ出してきた涙を拭った。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!