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「優しい」
「まぁ、圭ちゃんまだ給料安いからなぁ」
ゆきは少し残っていたハイボールを飲み干すと、大将におかわりを頼んだ。
「優しい目をしてたんだよ」
「あぁ、その刑事さん?」
「幼い頃の記憶のはずなのに、今でもはっきり覚えてるんだよ。優しくて、強くて」
「でも、なんでその刑事さんを探したいん?探してどうしたいん?」
「どうしたいんだろう。わからない。はじめはね、きちんとお礼が言いたいなって思ったんだ。中学1年の時に、その人がいた警察署に行って。でも、警察官って、異動があるでしょ?だから、そこにはもういなくて。でも、その人の名前を出すと、みんな妙な顔をするの。そんな人知りません、関わりたくありません、みたいな態度をとるの。でも、中学生の私には、それ以上探しようがなくて」
瑠美は、また溢れ出してきた涙を拭った。
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