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1 お茶会、いたしますわよ
どうしてこうなった。
その日茉莉恵と杏奈はローザノール王国の王族専用の中庭にて、推しの母親の若かりし頃のドレスを借りて、王妃オリヴィアのお茶の席に招待されていた。
ソフィーの一件が落着したのが昨日。
そして今朝は「今後どうすんべか」と身の振り方について二人話し合おうとしていたところに、「王妃殿下よりお茶のお誘いです」と伝令が来たのだ。
レネのせいで寝不足(主にキスの一件で眠れなかっただけで他意はない)の茉莉恵は、正直「イベントが大渋滞してる」と疲れ気味。
杏奈も同じ気持ちなのか、「文化祭から期末テストまで1週間ですって気分」と漏らした。
レネとアンリも同席はしていたが、緊張しないわけがない。
どうして私のような平民が、この国の王妃と、推しの母親の若かりし頃のドレスを借りて、作法もわからないままにお茶をしているのか。目の前に出されるどう見ても高価なティーカップを前に、茉莉恵は内心溜息をついた。
茉莉恵たちはある意味王子や重臣を救った立場であり、またあれほど女性の影がなかったレネとアンリのハートを射止めたということで興味津々らしい。
「急なお誘いごめんなさいね。それとあまり気負いしないで、お茶とお菓子を楽しんでいただけたら嬉しいわ」
自分たちの母親よりも少し若い王妃はそう言う。
「わ、私のような得体のしれない者をお招きいただき…あのレネ様、私本当にここにいていいんですか?」
「王妃殿下もそうおっしゃっている。本当に気負いせずとも大丈夫だ」
「むしろいつもアンナと話している時のようにお話しされたら面白いかもしれませんよ?」
「それはないです!…失礼しました」
自分たちのやり取りが面白かったのか、朗らかに笑う王妃。
「ふふ、レネとアンリは本当にあなたたちに気を許しているようね。二人は社交会でも滅多に女性と踊ったりしないから、わたくし二人に恋人ができたと聞いて自分のことのように嬉しいんですよ」
「ケホッ…こいびと」
お茶を飲みかけた杏奈が、恋人と聞いてむせた。
茉莉恵もお茶を飲んでいたら吹き出したかもしれない。
「すみません…恋人という現実を受け入れられなくてですね…」
「それはわかる」
「うふふ、それが普段の話し方ですのね。不思議な言い回しですわ」
うわ王妃様天然タイプだ、と茉莉恵は思った。
だが厳格であるよりは話しやすいのは間違いない。
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