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お茶会は終了したものの、そう簡単に養子縁組の話などできるのか気になった二人は、各々レネとアンリに詰め寄った。
「私たちこうトントン拍子に話が進んでしまっても正直困ります」
「私もマリも、身分制度のない国にいました。養子縁組のシステムはありますが、こんなカジュアルに“身分がないなら養子しちゃえ”ってノリではしないです」
決して推しと結ばれることが嫌なわけじゃない。むしろそんな幸せあるだろうか?ただ、どこか自分たちを置いたまま話が進んでしまっているようで不安だった。
「私、まだレネ様への想いを自覚したばかりです」
「私も、アンリ様のこと、もっと知りたいです」
二人がもじもじと言った後、しゅんとなってしまったのを見て、レネもアンリも、心がくすぐられる様な気がした。反応が可愛らしい。
「すまないマリエ。私もどこか舞い上がっていたのだ」
「お二人の気持ちを置いたまま少々進め方が強引でしたね。申し訳ありません」
今度は推したちがしゅんと反省しているのを見て二人の心がきゅんとする。
「ですがこの世界で後ろ盾のないお二人に、身分が付くというのはとても有利になります。そこはご理解いただけますか?」
「「はい」」
二人もそこは素直に頷く。
「養子の話は水面下で進めさせてもらう。だがその間、もう少しゆっくりとお互いを知っていくというのはどうだろう。私ももっと色々なマリエを知りたい」
「そうですね。今日取り決めて明日決定するというものでもありません。私たちで進めつつ、アンナの隅々まで知るというのはとても興味ありますね」
二人の笑みに艶が含まれているのを感じた。そうやって一挙手一投足に心を揺さぶられるのは、いちいち心臓に悪いようでいて、甘くて心地良いとも感じてしまう。
「レネ様、これからもよろしくお願いしますね」
「私もよろしくお願いします」
男性二人は「勿論」と返すと、腰を抱いて部屋まで戻ろうとして止められた。
「交際を伏せるんじゃないんですか?」
「適切な距離でお願いしますね」
今や推しに悶える現象が逆転したとも言える状況で、この距離感については当面の間二人を悩ませるものとなった。
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