1 お茶会、いたしますわよ

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 結局また城でやっかいになることになった二人は、ここにいる理由付けがされた。  茉莉恵は今まで通り騎士団寮のキッチンを手伝う。 杏奈はアンリのみではなく、魔術部隊全体の雑用係になった。  部屋は騎士団寮でも魔法塔でもない、宮殿の使用人たちのエリアが続く一角に部屋を与えられた。裁縫の作業場所も確保されているのを見て二人は小躍りした。 「見て!足踏みミシンがある!うわー、マジ?初めて見たかも」 「アンナ使い方わかる?」 「そんなもの当たって砕ければよいのだ」  多分レネとアンリが進言してくれたのだろう。二人は揃ってニマニマし、お互いに指摘して笑った。 「さて、私はそろそろ夕食の仕込み手伝いに行くよ。アンナはどうするの?てか雑用って何やるの?」 「まだわかんないけど、多分今までとあんまり変わらない気がする」 「それってアンリ様の部屋に入りびたる簡単なお仕事じゃん」 「やめてなんかそれエロい」  アンナが顔面を手で覆ってしまうと、茉莉恵は「でもさ」と追い打ちをかけてくる。 「アンリ様、けっこう粘着系?隙あらばイチャイチャしてやるぞーって感じしない?」 「感じ、っていうか、はい。大体事実です。って何言わせるんだよ!」 「実はゲームのバッドエンド展開が残ってるとか」 「それこそマジでやめて」  アンリのバッドエンドはヒロイン、ヒーロー共に死んでしまうというどうしようもなく鬱展開。だがそれが病的な執着をみせるヤンデレ系ヒーローとして二次創作では人気が高い。  でも二人は、ゲームシナリオはあってないようなものであることを既に知っている。もしかしたらそう言う世界線もあったのかもしれないが、少なくとも二人が歩む世界にシナリオの強制力などというものはなかった。  設定はほとんど同じようだったけど、この世界はこの世界の住人達がゲームなどとは無関係で生活をしてるのだ。  「じゃあ私行くね」  「私は雑用って何するか聞いてくるよ」  二人はまたあとでね、と言うとそれぞれの目的地へ向かった。
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