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「あれだ!」
信長たちは今川軍をすぐに発見した。大軍が行列を作っているのだから誰が見ても分かる。
そして小高い丘に登り、様子を窺っていた。
どこに義元がいるかはすぐに分かった
小姓に囲まれ、ひときわ派手な甲冑に身を包んだ武者。間違いなく義元だ。
「我らがいることに気づかず、無警戒に休んでおるな。丘を駆け下り、一気に義元のもとへ攻め寄せる!」
信長はそう言うと、「そんなの卑怯ですよ!」「正々堂々戦え!」と叫ばれた気がした。
しかし周囲を見回しても、それらしき者はいなかった。
「殿、いかがした?」
「いや、何でもない」
どうやらさんざん言われすぎて、幻聴を聞いてしまったようだ。
秀隆は不思議そうな顔をする。
信長は顔を激しく振り、気を取り直して言う。
「皆、覚悟はよいか!? 狙うは義元の首一つ! 我に続け!」
信長は馬を駆けさせ、丘を降りていく。
誰もついてこないのではないかと不安に思ったが、そんなことはなかった。
利家が長い槍を担ぎながら、徒歩で信長にぴったりとついてくる。
秀隆、勝家、秀貞ら諸将も続く。
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