6人が本棚に入れています
本棚に追加
「敵だ、敵だ!」
「織田軍の奇襲!」
「迎え撃てー!」
接近してくる木瓜の旗を掲げた将兵に気づき、今川の将兵が声を上げる。
だが予想外のことに多くの者は取り乱し、蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。
「利家、雑魚は放っておけ!」
「雑魚だと? 俺が雑魚の相手などするか! 男が廃る!」
逃げる敵を追いかけていた利家は追うのをやめ、すぐに信長のそばに戻ってくる。
「持ち場に戻れ!!」
「殿をお守りせよ!!」
勇敢な今川将は兵士たちを奮い立たせ、突進する織田軍を食い止めようと立ちはだかってくる。
「邪魔よ! どけい!!」
勝家が槍をぶん回し、今川兵をまとめて蹴散らす。
敵が怯んだところを信長と利家が突破し、先へと進む。
「いたぞ!」
ついに逃げる義元の姿を捉えた。
「やいやい卑怯者! まさか大将であられる義元様が、部下を置いて逃げるわけないよな!!」
利家が喧噪の中でも1キロ先に届くのではないかという大声で挑発する。
すると義元は走るのをやめてぴたりと止まった。
そして、利家のほうに振り向いて、腰から刀を抜く。
最初のコメントを投稿しよう!