6人が本棚に入れています
本棚に追加
「いやはや、殿は社長出勤ですなあ!」
「利家!? 清洲に見えぬと思っておったが、どこにいた!?」
そこには信長の小姓・前田利家がいた。
信長の五つ下で、上司という部下という関係ではあるが、隔てなく接するヤンキー仲間である。
「おっと。俺がお気に入りの茶坊主を斬っちまったったのをお忘れか?」
「あーー!! そうだった! てめえ、勝手に斬りやがって!」
茶坊主とはお茶を出す接待係である。
「あいつ、まつがくれた笄(こうがい)を盗みやがったんだ!」
まつとは利家の妻である。利家の8つ下で、まだ満12歳だが前年に長女を産んでいる。
「殿が許そうが! まつが許そうが! あんな不届き者をのさばさておいたら男が廃る! 全国の男に代わって成敗してやったまでよ!」
「そうだ! わけ分からんこと言って反省しないから、追放してやったんだ!」
「追放されたぐらいで、殿との絆を捨てるようじゃ男が廃る! 全国の男に代わって殿の危機と聞いて駆けつけたわけよ」
「それは全国の男が来てくれたほうが嬉しいが。……じゃなくて、どうやって先回りした? 俺は熱田にいくとは言ってないぞ」
「殿とは長い付き合いだ。きっと神頼みに来ると思って三日前から待ってたんだ」
「そんな前かよ!」
早朝の熱田神宮に信長の叫び声が響く。
最初のコメントを投稿しよう!