神頼み

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「まあよい。参陣を許す。ついてまいれ」 「はっ! 槍の又左、斬った茶坊主の分まで働くぜ!!」  信長は熱田神宮で休憩を取り、後続の到着を待った。  着の身着のままでやってきた兵士たちが続々と集まってくる。  そして十時になり、信長は境内に将兵を並べさせた。 「殿、揃いましたぞ」  秀隆に言われ、信長は一同の前に立つ。 「ごほん。えー、あー……」  さっきまで仮眠を取っていたため、信長は言おうと思っていたことが出てこなかった。 「本日はお日柄もよく、良い天気に恵まれて……」  信長がそう言うと、急に厚い灰色の雲が現れ、空を覆ってしまった。 「殿、雨が振りそうですぞ!」 「折りたたみ傘忘れました!」 「雨になったらずぶ濡れだ! 早く屋内に入りましょう」 「校長、話は短めにお願いいたす!」 「この天気なら熱中症にならんで済むな」  そんな声が聞こえてくる。 「おい、人がしゃべってる時は黙れと教わらんかったか! 最後まで聞かんとKillぞ!!」  信長は鬼の形相モードを発動、刀を抜いてだらけきった兵士たちに怒鳴る。 「我々は三千、対して今川は三万だ。まともに勝っても勝てん。ゆえに敵総大将のみを狙う!」 「総大将って誰っすか?」  怖いもの知らずな兵士が口を開く。 「だから最後まで聞けと……。どうせ言っても分からんと思うが、今川義元だ! 東海一の弓取りと言っているが、たぶん弓は持っていない。だが、とにかくすごい格好をしている奴だ。そいつの首を狙え! 他の奴は放置で構わん。どうだ、簡単であろう?」  と信長が答える。 「それなら、わしにも分かるぞ!」 「一人討てばいいんだな、楽勝だ!」 「殿の言うことは分かりやすくていいな!」 「とにかくすごい格好を討つぞー!」 「おーっ!」 「おーっ!」  兵士たちはそれぞれに鬨の声を上げ始め、腕や槍を突き上げる。 「お、おー……」  信長は遅れるようにして声を上げた。
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