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しばらくして、マリアが結婚し、他所の町へ引っ越したという話をリロイは耳にした。
(私は、アンソニーが戻って来るのを待つ…なんて言って…
やっぱり待てなかったんだな…)
そう思うと、アンソニーの心の中には、口惜しさと憤りのようなものが大きく渦を巻いた。
だが、その反面、マリアが幸せになれたんだという安堵にも似たものも感じられ、アンソニーの心は激しく揺さぶられた。
(そう…これで良い。
これこそが僕の望んだことなんだ。
僕はもうじきこの世を去るだろうが、その前に彼女が幸せになれて良かった…)
アンソニーのしわがれた瞳に、涙の粒が浮かんだ。
(さようなら、マリア…
どうか、どうか幸せに……)
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