言えない名前

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* 「おいしいかい?」 赤い舌を忙しなく動かしながらミルクを飲む黒猫に、アンソニーは優しく声をかけた。 「どこも怪我はしてないようだね。 それは良かったけれど、どうしよう… 君は誰かの飼い猫なんだろうか?それとも町の野良猫? ……どうする?しばらくここにいるかい?」 「……それは困るね。」 「えっ!?」 突然聞こえて来た声に、アンソニーが振り向くと、美しい女性が長椅子に座っていた。 「あ、あなたは…!」 「驚かせてごめんよ。 その猫を引き取りに来たんだ。」 「猫を…で、でも、一体どこから?」 アンソニーの問いかけに、女性はふふふと笑った。 「私は魔女。 扉や壁をすり抜けることなんて、造作もないことだよ。」 「ま、魔女…!!」 「ライアン、おいで! あんたが急に逃げ出すから、危ない所だったじゃないか。」 黒猫は甘えたような声で一鳴きし、魔女の足元にすり寄った。 「助けてくれて本当にありがとうよ。 あんたにはなにかお礼をしなくちゃならないね。」 「いえ…お礼なんて…」 「そうはいかないよ。 こう見えても私は義理堅い魔女なんだから。 あんたは怪我までしてこの子を助けてくれた。 この子の命の恩人なんだからね。 何が良い?お金かい? それとも…」 魔女は、意味ありげな笑みを浮かべ、アンソニーに返事を要求した。
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