言えない名前

6/18
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
「それでも、かまいません! 彼女が助かるのなら、僕はどうなっても構わない!」 「そう焦らずに、今夜一晩良く考えた方が良いよ。 重大なことなんだから。 それでも、あんたの心が変わらないっていうのなら、あんたの思い通りにしてあげるよ。 あ…その時には、あんたの恋人の髪の毛を持っておいでよ。」 「マリアの髪の毛を…?」 魔女は小さく頷いた。 「あぁ、魔法に使うんだよ。 言っておくが、恋人の病状が重ければ重い程、あんたはエネルギーを多く吸い取られる。 下手をしたらそのまま死んでしまうかもしれないよ。 それでも良いのかい?」 「し、死ぬ……?」 アンソニーは大きく目を見開き、魔女をじっとみつめた。 「どうする?やめておくかい?」 「い、いえ…それでも構いません! 彼女が元気になれるのなら、僕はどんなことだって…たとえ死んだって構わない!」 アンソニーの気迫に、魔女はどこか困ったような顔で溜息を吐き出した。 「まぁ、急ぐことはないよ。 とにかく、今夜ゆっくり考えなよ。 明日、また来るからね。 それじゃあ、ライアン…お暇しようかね。」 魔女は黒猫を抱いて、部屋を出て行った。 「どうかよろしくお願いします!」 魔女の後ろ姿に、アンソニーは精一杯の声を叫んだ。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!