言えない名前

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* 「いらっしゃい!お待ちしてました!」 次の日の夕刻、魔女が再びアンソニーのアパートを訪れた。 「その様子じゃ、あんたの気持ちは変わらなかったんだね。」 「もちろんですよ。 早く、魔法をかけて下さい。 マリアの髪の毛はちゃんと持って来ました。」 アンソニーは長い金色の髪を、魔女の前に差し出した。 「仕方がないね。 じゃあ、始めようか。 ……あ、その前に、あんたにひとつ言っておくことがある。 今のあんたには迷いはないだろうけど、もしかしたらこの先にその気持ちが変わることがあるかもしれない。 もしも、この魔法を解きたくなったら、あんたは自分の名を名乗るんだ。 自分がアンソニーだってことをあんたの恋人に話すんだ。 そうすれば、あんたは元のあんたに戻れる。 ただし、あんたの恋人も同じだ。 重い病気の彼女に戻る。 チャンスは一度っきり…わかったね?」 「僕はどんなことがあってもそんなことはしません!」 「あぁ、あぁ、わかってるよ。 万一の時のためのことだから、一応、心に留めておいておくれ。 それじゃあ、魔法にとりかかるからね。」 魔女は泥のようなものをこね、女の形の泥人形を作り上げ、その中に、マリアの金色の髪を埋め込んだ。 「さぁ、これを持って、目を閉じるんだ。 呪文の詠唱が終わるまで、ずっと閉じてるんだよ。」 「わ、わかりました。」 アンソニーは泥人形を手渡され、それと同時に魔女の低い声で呪文の詠唱が始まった。
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