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「それ、『恋』だと思うんだけど」
さっき交換したばかりのお菓子を食べながら、希美はやけに大人びた笑みを浮かべる。
今朝、彼女が「お菓子をいっぱいもらうから弁当を持ってこなかった」と言ったときは馬鹿なんじゃないかと思ったけれど、あながち間違った判断ではなかったようだ。
机に積みあがったお菓子の山。カロリーを想像しただけでぞっとする。
見ているだけで口の中が甘くなったので、弁当に入っていた唐揚げは救世主だった。それを飲み込んでから口を開く。
「さすがにそれはないでしょ」
思っていたよりも低い声が出た。
人が恋に落ちるには、そこそこの時間と実績が必要なのだ。
恋愛リアリティー番組のように、二日三日で人のことを好きになる人の神経が理解できない。一目ぼれも迷信だろうし。
だから、これは恋ではない。
恋ではないはずなのに。
一年前のあの日から、毎日この胸の奥のところが揺れている。
「チョコあげればいいじゃん」
「なんでよ」
一回もまともに喋ったことがないのに、チョコなんて渡せるわけがないじゃない。
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