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ケーキ屋さん
「どこか開いていて……」
30になるひとりぼっちの女に、どうか光よ、指してくれ。
そんなことを願いながら、心当たりのあるケーキ屋を探すが、知っている近場のところは全て18時の 閉店だった。
「嘘でしょ……」
電車に乗って少し都会まで出るとケーキ屋さんはあるだろうけど、そこまで行く労力も体力もない。
それに、たかが自分の誕生日ケーキだし。
「コンビニケーキかなぁ」
まぁ最近のコンビニスイーツって美味しいし。それに安いし。良いじゃん、お手頃って私みたいで。
そんな自虐的なことを思い、フッと片方の口角を上げて顔を上げ左を見ると、ケーキ屋さんがあるではないか。
赤い屋根のログハウス調の建物が、あたたかな色の電飾を纏い光っている。スポンジの甘い匂いがしてきていて、ガラス張りになっている所から、お菓子の家のオブジェが見える。
ケーキの文字は見えないけれど、多分ケーキ屋さん。
恐る恐る「OPEN」のプレートがかかった扉を開けると、ふわりと焼きたての香りが漂ってきた。
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