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「それが一変したのは、ヒトが日々の生活に安定を求め、穀物を栽培し始めたからじゃ。犬に比べ、随分と遅くなってから猫もヒトのパートナーとして共に生きるようになった。
いや、パートナーと言うのは間違いかもしれぬ。
何故なら、猫は穀物に見向きもしないで、穀物倉庫を荒らしに来る鼠を狩る益獣とみなされたじゃ。『居てくれるだけで鼠が来なくなって助かる』と、倉庫の出入りを許されたのじゃ」
「分かった! 『顔パス』ってヤツね」
「……きんよ。またお姉ちゃんから聞きかじった言葉じゃな?」
長毛で分かりにくいけど、グレさんが顔を顰めたような気がした。
「……そう」
気まずく答えた。
「今回は、あながち間違いではないの」
あら。良かった。
「我々は、犬のような共同作業の相棒とは違う。煩わしい訓練や躾けもいらぬ。あるがままに振舞うだけでいい。自由に、人にとって大切な穀物倉庫に『顔パス』で入れる立場になった」
どうやら、グレさんも『顔パス』って言葉を使いたかったみたいね。
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