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「お腹空いてない?」
シャワーから出ると絵里が僕に聞いた。
「うん、まあ」
お腹は空いているけど、自分で作る気にはなれないし、確か、キッチンのシンクは……
絵里が亡くなってからは、料理なんてする気になれなくて、弁当かレトルトばかり食べていた。
シンクは、その残骸で埋もれている。とても料理なんてできる状態じゃなかった。
「絵里、ごめん。キッチン、ぐちゃぐちゃで」
僕が申し訳なさそうに言うと、
「うん。だから、片付けておいたよ。悠介が寝てる間に」
絵里は、さも当然といった感じで答えた。
「え?だって絵里、物を触れないじゃん」
僕が驚いて尋ねると、
「うん。だから、ほら」
そう言うと、絵里は目で見えない何かを操る。
すると、食器棚の扉が開いて、コップがふらふらと宙を漂い出す。そして、テーブルの上迄移動すると、コトリと音を立てて着地した。
「ポルターガイスト!えー、こんな風に使えるの?」
僕が目を見開いて驚きの声を上げる。
絵里は、フッと鼻で笑うと、
「才能、てやつ?」
と言って、得意そうな顔をこちらに向けた。
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