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あまりの寝苦しさに眼を開けると、枕元に妻が立っていた。
僕は驚いて眼を見開く。
なぜなら、妻は一年前にガンで亡くなっていたからだ。
幽霊?
元々色白な妻だったけど、枕元に立つ妻の顔は透けて見えるような青白さだった。
「絵里?」
僕は、そっと声を掛けてみる。
すると、
「どうしてわたしは、ここに立っているの?」
妻は僕を見下ろして尋ねた。
「それは、僕の台詞だよ」
僕は起き上がろうとして、始めて自分が金縛りにあって動けないことに気付く。
妻が亡くなってから、すでに一年が過ぎていた。
どうして妻は今頃、幽霊になって出てきたのだろう。
「何か思い残したことでもあるの?」
僕は目線だけ妻に向けて尋ねた。
妻は、僕の言葉に首を傾げて、何か考えているようだった。
それから、言葉を発しようと何度か、口を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返した後、躊躇いながら僕に尋ねた。
「あの、あなたは誰ですか?」
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