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 こんなことってあるのだろうか。  幽霊が記憶喪失?だなんて。  自分が何をしに出てきたのか分からないだなんて。  それに、夫である僕のことも忘れている。  正直言って酷い。   酷過ぎる。  だけど、枕元でうな垂れたまま、落ち込んでいる妻の幽霊を見ていると、何だか段々、不憫になってきた。  まあ、元々、二十六歳の若さで、ガンで亡くなっている事自体が不憫すぎるのだけど。 「あの、取り敢えず、金縛りを解いてよ」  僕は何とか首を捻って妻の幽霊に頼んだ。 「え?あ、ちょっと待ってて。えーと、こうかな……」  妻の幽霊は、眼の前にある見えない何かを眼で辿って操作する。  すると、急に身体が軽くなり、僕はようやくベッドの上に上半身を起こすことができた。
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