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「僕がここで本を読んでいて、うとうととしていると、いつの間にか君が横にいて静かに本を読んでいるんだ」
僕は目を瞑り、当時のことを思い浮かべながら絵里に話して聞かせる。
「目が覚めた時、当然のように、そこに君の横顔があって、僕はそれを見つけると、何とも言えない幸せな気持ちになるんだ。そして、思うんだ。ああ、この横顔が毎日僕の側にあるといいのに、てね。」
そこで、僕は瞑っていた目を開く。そして、昔と同じように絵里の横顔を探した。
絵里は、昔と同じ場所、僕の左側で芝生に腰を下ろし前を向いて、静かに僕の話を聞いていた。その横顔は、絵里が昔、僕に見せた横顔と全く同じだった。
「その場所……」
僕が言うと、絵里がこちらを向く。
「その場所だよ。いつも絵里がいたのは」
ふふ。絵里は小さく微笑むと、
「そうだと思った」
と言って、寝転ぶ僕にそっとキスをした。
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