マニキュア

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 部屋で男は椅子に座っていた。Tシャツに短パンの格好だった。俺は床へ座り、男を見上げていた。男は冴えなかった。浅黒く平べったい顔も冴えなかった。細い目も、白い埃の塊のような唇も冴えなかった。よれよれのTシャツも、よれよれの短パンも冴えなかった。冴えないということを除いて印象に残ることがなかった。男は左足の太ももを、右足の太ももへのせて足を組んだ。俺は男の左足をまじまじと見た。脛毛が生えていた。爪には濃い緑色のマニキュアが厚く塗られていた。
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