磁石の方舟

ライブ・クロスロード

「接種証明が招く表現の分断」改稿。

コロナ禍の切ピアノ線の振動は多彩だ。

その調べは人の心を打つ。音色が響き渡る中、ある者は死ぬ決意をあらため、心をおどらせる。その振動はまるで魂を揺さぶるようだった。

一人の男が、路上でその調べに耳を傾けていた。彼は迷い込んだような表情で立ち止まり、音の波に身を委ねていた。ピアノの調べは彼の心を捉え、過去の出来事や未来への不安を洗い流していく。

彼は静かに息を吸い込み、その振動に身を委ねる。思考が鈍り、感情が高まる。この瞬間、彼の心は一時的に解放され、自由に舞い上がった。

周りの人々もその音色に引き寄せられ、小耳にはさんだ瞬間に勇み足を止め、振り返る落ち着きをとりもどした。彼らもまた、ピアノの調べによって、内なる感情を刺激され、心を揺さぶられたのだ。

この振動はまるで魔法のように人々を引き寄せ、彼らの心を奪っていく。ピアノの音色は、人々の心を縛る日常の枷を解き放ち、自由な感情を湧き上がらせる。

そして、その音色はやがて静かに消えゆく。しかし、その響きに触れた人々の心には、一時の解放感が残る。彼らはまた日常に戻るが、心にはピアノの調べの余韻が残り続けるのだった。

ピアノ線の振動は多彩だ。その調べは人の心を打つ。それはまるで、魂の共鳴のように響き渡り、人々の心を揺さぶっていく。

つかの間の静寂に生活音が雪崩れ込む。その瞬間に聴衆は電話口で言い訳を始める。
「すまん。事故で遅れる。ひきにげだ」
「またあの男ですか」
「ああ、うっかり聞き惚れちまった。十五分遅れる」