31人が本棚に入れています
本棚に追加
「時代の移り変わりと共に亡者の方々も変わってきてる。
裁く側の力量が問われるんだよ」
経営者みたいなこと言ってる。
「冥界もアップデートが必要なんだ」
閻魔がスーツ姿ってことは、これまでもアップデートを繰り返したんだろうな。
足を組み、瞳を野心でギラつかせるセクシー閻魔。
「紗那ちゃん。
現代を生きながら冥界に来られるキミは、我々にとって貴重な人材なんだよ」
ドキッとしたのは、イケメンに熱っぽい目で見つめられたから。
だけじゃない。
【緑川様の今後のご活躍を──】
通算100通の“お祈りメール”が頭をよぎる。
冥界なんて、ホントは怖い。でも。
型に嵌めた言葉じゃなく、閻魔さまは心から私の能力を買ってくれている。
そんな気がした。
「それとも、もう就職決まっちゃったかな?」
閻魔さまがしょんぼりと肩を落とす。
篁が鼻で笑った。
「フ。聞くまでもない。
どう見ても暇であろう」
「忙しいわ!」と返せないのが辛いところだ。
「あの……お給料ってもらえるんですか?」
「その点なら心配ないよ」
恐る恐る聞いてみると、閻魔さまはパアッと笑顔になった。
「俺を祀ってる寺社はけっこう多いんだ。
その中に“第一閻魔神社”(※)ってとこがあってね」
その第一閻魔神社の神主の家系は代々特殊な力を持っており、閻魔さまと交信することが可能だという。
「給料はそこから出そう。
初めはそんなにたくさん払えないけど」
そ、そんな神社があるんだ。
人件費を捻出してもらうなんて申し訳ない。
金銭面の問題をあっさりクリアしてしまった。
「決まりだね」
私の様子を見ていた閻魔さまが手を差し出す。
躊躇いつつ膝から手を浮かせると、グッと引き寄せられる。
超絶イケメン閻魔と握手してしまった。
大きくてあたたかい、閻魔さまの手。
「フン。せいぜい励むことだな」
ふんぞり返ったままの篁。
直属の上司には難ありか。
でも、とりあえず。
就職、できちゃった。
(※)架空の神社です。
最初のコメントを投稿しよう!