運命って何ですか?

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運命って何ですか?

 救急車が病院に到着した頃には、既にあたりは真っ暗だった。  今は白い廊下の向こうで、オペ中のランプが光ってる。  アコさんも、病院に駆けつけた“シュンちゃん”の家族も。  私のことをあまり気にしていないようだ。  それどころじゃないのだろう。  運命よ、変わって。  私があの場に来たことで、発見が少しでも早まったのなら。  “シュンちゃん”を助けて。  アコさんは呆然と座ってる。  真っ白なワンピースを土と血で汚して。  「関係者の方、中へ」  手術着のお医者さんが、深刻な表情で呼びにきた。  ぎこちない足取りで、アコさんたちがオペ室に入っていく。  真っ白な廊下に、何かがチカッと光った。  「指環(ゆびわ)……」  「シュンタ!!」  耳をつんざくような声にハッとなる。  オペ室から漏れる慟哭。  「シュンちゃん、嘘だよね? ねえ、起きて」  アコさん……。  「起きてよおおぉぉっ!!」  アコさんが放り出していったバッグの傍に、指環を置いた。  救急用の出入り口から外へ出る。  さっきは気がつかなかった。  山が近い田舎町の夜空には、満天の星。  ──一緒にいたはずなんだ。  ──車で展望台に向かっ……  事故死。  私、何も分かってなかった。  冥界には誰が来てもおかしくないんだ。  あの山の、星降る展望台で。  渡そうとしてたんだね。    指環の内側に刻まれた文字は。  “S to A”  シュンタから、アコへ──。
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