それでも私、このお仕事続けます。

1/2
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ

それでも私、このお仕事続けます。

 「だりぃな、7回も審査されんのかよ」  シュンタさんは(たかむら)に“宣告”を受けてからは次第に落ち着き、だいぶ表情も柔らかくなった。  素直じゃないところもあるけれど。  今、応接スペースで十王の裁きについて説明し終えたところだ。  「俺、アコに出会う前、相当やらかしちゃっててさ。  やっぱ地獄行きになんのかな?」  ガシガシと頭をかくシュンタさん。  どんな生活してきたんだろ。  「それは十王次第ですが……。  基本的に、ちゃんと人間のことを考えてくれてる方々ですよ。  ちょっと怖い思いもするかもしれないけど」  研修を思い出しながらお伝えすると、シュンタさんは「へえー」と感心したような顔をする。  「転生先によっては、生まれ変わる前に俗世の方々に会える機会もあります。  お盆とかね」  「そか……。遠いとこまで来ちまったんだな、俺は」  しんみりとした空気が流れた。  お盆に会えると言ったって、実体あるものとして帰れるワケじゃない。  シュンタさんも、それを分かっているのだろう。  「十王ブラザーズは全員イケメンですので、目の保養になりますよ」  話をそらすと、シュンタさんは「なに言ってんだ」とケラケラ笑った。  「……世話になったな」  笑いが途切れたところで真面目なトーンになる。  「事故現場に行ってくれたんだろ?」  シュンタさんが気遣わしげに私の足元を指差した。  ビジネススーツは所々ほつれ、パンプスには泥が。  脛には血が滲んでいるけれど。  「見た目ほどひどくないんですよ」  「突き飛ばしたりして悪かった」  私が答える傍から、シュンタさんは頭を下げる。  「気にしないでください」  私の未熟さが招いたことだ。  それが原因でシュンタさんを混乱させてしまった。  「……アコのこと、よろしく頼む」  私を真っ直ぐに見るシュンタさんの目に、光るものがある。  「お任せください」  私は、その願いを真っ直ぐに受け止めた──。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!