それでも私、このお仕事続けます。

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 ◇  初七日まで、シュンタさんはこの空間で待機することになる。  同じく待機中のおばあちゃんのグループと仲良くなったようだ。  輪の中心で、一生懸命おばあちゃんを笑わせるシュンタさん。  それでも。  「ごめんな、アコ。  怖い思いさせちまって……」  一人で夢枕のブースに立つ彼の横顔は、とても寂しそうだった。  ヤンチャなところもあるけど、とても純粋で優しい人。  彼が心配するような地獄行きにはならないだろう。  初盆には、きっとアコさんの元へ……。  冥界には、誰が来てもおかしくない。  冥界(ここ)には万に一つも間違いはなく、足を踏み入れた者はもれなく小野篁(おののたかむら)の宣告を受ける。  俗世へ帰れるか否かは、彼が持つ羽扇次第──。  「篁さま」  篁は、珍しく自席に座らず畳敷きの空間を歩いて回っている。  「ご迷惑をおかけしてすみませんでした」  「フン」  私が頭を下げると、篁はいつもの調子で言った。  「わざわざ舞い戻るとは物好きな奴だ」  本当は逃げたかった。  でも。  「私、お仕事続けようと思います。  篁さまの後を継げるように」  自分の役割を見つけたから。  「勝手にいたせ」  そう言った時にはもう、篁は背を向けている。  私の役割。  人の思いを繋ぐ──。  でも、今だけ。  大きな背中に走り寄った。  「うわああぁぁん!!」  今だけ。ほんの少しだけ。  背中を貸してほしい。  そうしたら、悲しい運命にも向き合えるようになるから。  引き離された2人の思いを、繋げるから……。
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