29人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
エピローグ
「紗那ぁ? 時間、大丈夫なのー?」
階下からの母の声で目が覚めた。
「あれ……」
自分の部屋にいる?
私、冥界で泣いてたはずなんだけどな。
篁の背中で。
その後の記憶は無いんだけど。
泣いたのは確かなようで、瞼が重い。
母は、私が深夜に帰宅したと思っているようだ。
どうやって帰ってきたんだろう。
身体を起こしてみると、ベッドの上だった。
汚れたビジネススーツのままで、パンプスも履いたまま。
左の脛に、青々とした葉っぱが乗っかっている。
「治ってる」
葉っぱを取り上げてみると、流血していた脛の傷は跡形もなかった。
痛みもない。
これ、篁が──?
私をここまで運んでくれたのも?
「よし、行くか」
両手でピシャリと頬を叩く。
私には、やるべきことがあるんだ──。
◇
朝の歩道橋。
真ん中から下を覗くと、たくさんの車が行き交っている。
ここから飛び込めば、シュンちゃんのところへ行けるかな。
どうして?
どうして、私を置いて逝っちゃったの?
シュンちゃんがいない世界なんて、何の意味もないよ。
きっと一瞬で済む。
ねえ、シュンちゃん。私も、今そっちへ……。
最初のコメントを投稿しよう!