31人が本棚に入れています
本棚に追加
続 えらいところに来ちゃいました。
「……ってワケで、俗世と冥界を行き来できるのは紗那ちゃんで2人目なんだ」
延々と続く畳敷きの空間の中にある応接セットに案内された。
ターコイズブルーの布が掛けられたソファ。
布の端には房がついている。
分厚い一枚板のテーブルを挟んで、私は閻魔さまの話を聞いているところだ。
平安の頃、小野篁が冥界と俗世を行き来して閻魔さまに仕えていたという伝説は事実だった。
その人物が目の前にいるなんて、にわかには信じ難い。
当の本人は、閻魔さまの隣にふんぞり返ってテーブルに足を投げ出している。
「あの事故がきっかけで能力が出現したみたいだね」
トラックとの接触事故……。
閻魔さまは膝の上で手をくみ、思いを巡らす私をじっと見つめて言った。
「事故のはずみで冥界と繋がる道ができたんだ。
その鞄に」
ゴクリと唾を飲み込む。
閻魔さまが指差す鞄。
就活に使ってる鞄。
今も私の隣に置いてあるけど、なんか直視できない。
「篁は井戸を通って来てたけど、便利な時代になったよね。
鞄さえ持ち歩いてたら、いつでも冥界に来られる」
閻魔さまはそこで一息つくと、背もたれに上半身を預けた。
そこへ、
「主、失礼致します」
最初のコメントを投稿しよう!