続 えらいところに来ちゃいました。

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 カフェエプロン姿の女の人が、黒色のマグカップを持って立っている。  血の気を失ったように青みがかった肌。  でも、それを差し引いても綺麗な人だ。  パープルの艶ある髪を腰まで伸ばしたスレンダー美人。    自分がパジャマ姿であることを改めて恥じた。  スレンダー美人が腰を屈め、閻魔さまの手にマグカップを渡す。  そこで、私は見た。  綺麗な髪の間から、髪色と同じパープルの角が一本生えている。    (さすが冥界……)  ボタンを2つほど外したブラウスから、スレンダーな割に豊かなバストがチラ見えしてる。  胸ポケットにつけたネームプレートには、  “獄卒”と──。  「ああ、いつもありがとう」  閻魔さまが片手を上げて流し目を送ると、獄卒ちゃんはポッと頬を赤らめて走り去った。  これ、ほんとに夢じゃないのかしら。  頬をつねったら痛かった。  「何をしておるか、阿呆」  久方ぶりに聞いた声に反応すれば、ふんぞり返った(たかむら)が目だけこちらに向けている。    ほんと愛想ないし、人のことをバカにした態度だよね。  ……顔は綺麗だけど。  「閻魔さま。その飲み物、何ですか?」  私は篁を華麗にスルーし、閻魔さまに話しかけた。  閻魔さまは質問には答えず、ニヤリと笑ってカップをこちらに傾ける。  突如、青緑色の炎が上がった。  迫り来る熱波。    「な、何!?」  (そむ)けた顔を恐る恐る元に戻せば、カップの中でマグマのような赤黒い液体が(うごめ)いている。  何も力を加えてないのに、ドロドロと波打っているのだ。  閻魔さまが無言でカップをあおる。  上下する喉仏がセクシー。  謎の液体を飲み干し、満足そうに息をついた閻魔さまはペロリの口の周りを舐めた。  「フフ。これは煮やした銅さ」  何を煮やしたって?    「俺って、冥界のリーダーとして超たくさんの亡者の皆さんを裁いてるじゃん?」  閻魔さまは、悩ましげに眉間に指を置く。  っていうか、そのマグカップ何製?  「その罪深さから、いつもコレ飲まされてて。  大変なんだよ、喉と内臓がただれちゃって」  怖い。  「でも逆に、この感じにハマっちゃってね」  目がイッちゃってる。  「相変わらず悪趣味な奴だ」  篁が目を閉じたまま呆れたような声を出す。  2人とも普通の男の人に見えるけど、やっぱり違うんだ。  俗世の常識とかけ離れているのは美貌だけじゃない……。  私、超ヤバいところに来ちゃった──?
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