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 チャミーの眼球は真っ黒い穴のように光がなかった。かわいらしい首は折れ曲がり、手足はちぎれて四散し、ふさふさだった尾っぽは見る影もないほど毛がむしられている。胴体からは基盤や配線がはみ出していた。  どうしてこんなことに…  僕は飛び散ったパーツをひとつずつ拾った。目の奥が発火寸前のコンセントみたいに熱い。ものすごく苦い涙がぽろぽろ溢れて止まらない。  元に戻せるだろうか。いや、必ず直してあげるから。  不意にセネア・コールの顔が浮かんだ。彼女はチャミーの姿を見たら悲しむだろうか。それとも僕が悲しんでいることを嗤うだろうか。  僕はばらばらになったパーツを拾い続けた。  時間がたつにつれて、悲しみは祈りに変わっていった。祈りというか、一縷の望みだった。  チャミーの目はカメラ機能も備えている。耳も音声を記録しているかもしれない。情報収集機能が何かしらの記録を残していれば、偶発的な事故か陰湿な破壊かわかるはずだ。せめて原因だけでもを知りたい。もし壊した犯人がいるのなら償いをさせる。  僕は大急ぎで車へ戻った。          
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