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4
目が覚めた時、僕は僕を見ていた。僕の目は高い所から僕を見下ろしていた。意識だけが浮遊して天井から眺めている――そう、幽体離脱ってやつだ。
その部屋は白い壁と白い天井に囲まれていて、真ん中にストレッチャーがあって、裸の僕が寝かされていた。無数のチューブや点滴の針が体中に挿入されている。ストレッチャーの周りはパソコンがずらりと並び、白衣姿の男女がしきりにキーボードを叩いていた。こいつら医者か。医者というよりは研究員みたいな感じだ。
ウソだろ。死んだのか。
オレは死んでない。僕は死んでない。これはきっと何かの間違いだ。
都市再開発地帯に踏み込んだら、いきなり頭痛がして、心臓が締目付けられるような痛みがあって、そこまでは覚えているが…
「これは夢だ! 早く覚めてくれ!」
思わず叫んだ。
「いいえ、夢じゃないわ。現実なの、レン」
聞き覚えのある声が耳元に届いた。視線の先に、セネア・コールがいる。別れの置手紙をさらりと置いて、僕から去っていった恋人が目の前にいる。どういうことだ?
「お前たちがチャミーを殺したんだな」
とっさに思いついた言葉を投げた。
「チャミー? ああ、あのAi栗鼠のことね。あたしがプレゼントしたやつ。気に入ってくれたみたいで、ありがとう」
セネアは嬉しそうに笑った。
「ふざけるな! 俺をもとに戻せ」
僕は手足を振り回したつもりだったが、本当はどこも動いていなかった。
いや…ストレッチャーに寝かされている僕の両手足が激しく動いただけだった。
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