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ラブホを出て、 山手線に乗ったのは23時少し前。 北千住在住の佐橋とは西日暮里で別れ、 浦和在住の川瀬と田端で京浜東北線に 乗り換えた。 9時間近くもラブホにいて 一睡もせずにSEXに明け暮れたからか、 睡魔がピークに達していた僕は 吊り革に掴まりながら居眠りを始めた。 「岸野くん、もうすぐ王子だよ」 「ん‥‥」 川瀬に寄りかかり、眠りに誘われていく。 そう言えば明日一限から講義があるなと 思いながら目を閉じ、再び目を開けると、 そこは見知らぬ駅のタクシー乗り場だった。 「え?何、どういうこと」 僕の肩を抱き、タクシーの中にいる 運転手に何かを話しているのは 間違いなく川瀬だった。 「あ、起きた?おはよう」 とりあえず乗ってと言葉を続けた川瀬に、 タクシーに乗り込みながら はっきりしない意識のまま問いかけた。 「ここ、どこ?」 「浦和。岸野くん起きなくて、仕方なく 連れてきた。良ければ、うちに泊まって」 「あ、え、今何時?」 「0時」 「ああ‥‥なんか、ごめん」 「明日というか、今日は朝早い?」 「うん。一限から講義」 「テキストやノートの準備、必要だよね」 「そうだね」 「うち、バスで3つめの停留所なんだ。 朝、送るから安心して」 「ありがとう‥‥」 「運転手さん、そこの角を右です」 川瀬の端正な横顔を見ながら、 僕は今更ながらドキドキしていた。 さっきまで散々SEXしていた相手なのに。 何故、こんなに意識してしまうんだ?と。
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