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不意のアラームの音で目が覚めた。 川瀬がかけてくれていた、デジタル時計の 目覚ましは5時20分を差している。 (何もなかった‥‥) 川瀬とシングルベッドで抱き合って眠ったが 本当に眠るだけで終わった。 まあ、直前までヤリまくったんだし、 出したくても出せるものなんて もうなかったんだろう(←言い方)。 おかげでぐっすり眠れたし、 6時前にここを出られれば自宅に帰っても 一限の講義には充分間に合う。 ありがとう、川瀬。 と、ベッドから抜け出したその時、 ベッドに沈み眠っていたはずの川瀬が 大きく伸びをした。 「おはよう、岸野くん」 「あ、おはよう。起こしてごめん」 「いやあ?大丈夫だよ‥‥何か食べてく?」 「大丈夫、でもご家族が起きてるなら、 挨拶して帰るよ」 「たぶん、母さんがもうすぐ起きるよ。 バス、6時7分が最初。歩いて2分だけど、 6時には出た方がいいかも」 「わかった。ありがとう。顔だけ洗いに 行ってもいいかな」 「洗面所、案内するよ」 川瀬はベッドから起き上がると、 足早に僕に近づいてきた。 「岸野くん。忘れ物だよ」 「ん、何?」 川瀬に忘れ物と言われたが、 全く身に覚えがないと首を傾げた。 次の瞬間。 僕は川瀬に引き寄せられていた。 「あ」 川瀬の腕の中で息が止まった。 「おはようのハグ」 と言って微笑んだ川瀬から目が離せない。 僕は、川瀬に恋している。 そう気づいたのは、まさにこの時だった。
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