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⑦
川瀬と佐橋に再会したのは、
それからちょうど2週間後のことだった。
「朝から呼び出してごめんね。眠い?」
佐橋に優しく訊かれ、微笑んで答えた。
「いや、大丈夫」
今回の逢瀬も、同じ鶯谷のラブホ。
王子の自宅からは至近距離だから
決して苦ではなかったし、
川瀬に会えることが嬉しかった。
「由貴は、機嫌悪そうだけどね」
「別に」
ふいっと横を向いた川瀬の表情は、
確かに曇っている。
「どうしたの、川瀬くん」
「何でもない」
「何でもないっていう顔じゃないよ?
まあいいや。岸野くん、あれから心境に
変化はあった?」
「えっ」
佐橋に訊かれ、動揺した。
沈黙してしまった僕に佐橋が言葉を続けた。
「変化があったみたいだね‥‥それは、
僕たちに深く関係がある?」
「ど、どうかな」
ちらっと川瀬を見たが、
まだ川瀬はそっぽを向いたままでいる。
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