3/6

36人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
残された僕と佐橋は顔を見合わせ、 笑い合う。 「やる気はありそうだよね」 「素直じゃないんだから。岸野くん、 良かったらシャワー一緒に浴びようか」 「いいよ」 「今日はとことん由貴の嫉妬を煽ろう」 「うん」 「ところで、自分でキレイにするやり方は どうやって覚えたの」 「中学の時、ネットで調べた」 「はやっ、実践したいって思わなかったの」 「こればかりは‥‥出逢いなかったし」 「なるほどね。ねえ、葵って呼んでいい?」 「もちろん。何か、距離が近くなったね」 佐橋とベッドに腰掛け、手を繋いでいると。 撫然とした表情で川瀬が浴室から出てきた。 「次、どっちが入る?」 川瀬の一言に、僕と佐橋は笑いながら 「僕たちは一緒に」 と答えた。 「はあ?」 案の定、川瀬は明らかに動揺した様子で、 僕たちを凝視した。 「行こう、葵」 「うん♪」 手を繋いだまま浴室に向かう僕たちに、 川瀬の悲痛な声が響いた。 「やっぱり、帰る!」 川瀬の嫉妬を煽る作戦は、大成功だった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加