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残された僕と佐橋は顔を見合わせ、
笑い合う。
「やる気はありそうだよね」
「素直じゃないんだから。岸野くん、
良かったらシャワー一緒に浴びようか」
「いいよ」
「今日はとことん由貴の嫉妬を煽ろう」
「うん」
「ところで、自分でキレイにするやり方は
どうやって覚えたの」
「中学の時、ネットで調べた」
「はやっ、実践したいって思わなかったの」
「こればかりは‥‥出逢いなかったし」
「なるほどね。ねえ、葵って呼んでいい?」
「もちろん。何か、距離が近くなったね」
佐橋とベッドに腰掛け、手を繋いでいると。
撫然とした表情で川瀬が浴室から出てきた。
「次、どっちが入る?」
川瀬の一言に、僕と佐橋は笑いながら
「僕たちは一緒に」
と答えた。
「はあ?」
案の定、川瀬は明らかに動揺した様子で、
僕たちを凝視した。
「行こう、葵」
「うん♪」
手を繋いだまま浴室に向かう僕たちに、
川瀬の悲痛な声が響いた。
「やっぱり、帰る!」
川瀬の嫉妬を煽る作戦は、大成功だった。
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