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「宅配ピザが頼めるみたい、どうする?」 13時を回り、 佐橋はシャワーを浴びに行った。 川瀬と2人きりの静かな空間。 ソファに根を張ってしまった川瀬に近づき、 ピザのメニューを差し出した。 「佐橋と決めていいよ」 「川瀬くん、どうしたの」 「何が」 「怒ってる?」 「別に」 「隣、座ってもいい?」 「どうぞ」 「せっかく会えたのに。僕を抱かないの」 「佐橋に抱いてもらえよ」 「川瀬くんともしたいんだけど」 「何、考えてるの」 「え?」 「岸野くん、好きな人がいるんでしょ」 「何で」 「佐橋が言ってたじゃん。僕もそう思う」 鋭い視線を僕にぶつけ、川瀬は息を吐く。 「好きな人がいるなら、この関係は終わり。 絶対にそうした方がいいよ」 「目の前にいるとしたら?」 「え」 「川瀬くん‥‥気づいてないの」 そう言って、僕は川瀬の手を握る。 「気のない素振りをしてたけど、 僕が好きなのは」 その後の言葉は、 川瀬のキスで言えなくなった。 タバコの匂いが口の中に広がったが、 でも川瀬と再びキスができて嬉しかった。 「佐橋には僕から言うよ」 唇が離れ、川瀬が耳元で囁いた。 「抱きたくない訳がない‥‥佐橋に抱かれる 岸野くんを見て、嫉妬してた‥‥僕だけが 好きなのかと思ってた‥‥」 川瀬は僕を抱きしめ、更に言葉を続けた。 「もう葵は、僕だけのものだ」 川瀬にしがみつき、深いキスをしながら 涙が出た。 「あー、由貴と仲直りしたの?」 浴室から出てきた佐橋が、 僕と川瀬がキスをしているのを見て 仲直りしたと誤解している。 川瀬は、佐橋に何と言うんだろう。 1人を選べばもう1人は選べないこの状況が とても心苦しくて、申し訳なく思う。 絶妙なバランスで突然始まった、 このラブトライアングル。 終止符を打つタイミングは、川瀬次第だ。 それから、 川瀬の言っていた「本当の目的」の意味は?
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