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後日談
あれから、二十四年の月日が経った。
ノストラダムスの大予言は、不発に終わった。あれから様々な研究者が関連図書を「理論的にも科学的にも信憑性に乏しい」と結論を下す中で、恵美は「私達の絆が運命を捻じ曲げたんだよ」と嬉々として語っていた。
「さっきから何をソワソワしてるのさ」
彼女と結婚して早くも十五年。流石に何か隠してることもバレバレなようで、疑念とも揶揄とも取れる目を向けられた。
「……やっぱり判っちゃうか?」
「当たり前じゃん。私と何年一緒にいると思ってるのさ。……子供達が帰ってくるまでに見せてみなさい。そうすれば許してあげる」
「はは、やっぱり恵美には敵わないよ」
苦笑いして、ポケットから手の平サイズの黒い箱を取り出す。本当は晩酌の時にでも渡そうかと思ってたけど、致し方あるまい。
目を見開いた恵美がそれを受け取り、徐ろに箱を開ける。中に入っていたのは銀色のネックレス。星形の青いペンダントが装飾された、オーダーメイドの特別製だった。
「ほら、もうすぐ結婚記念日だから。十五年の節目だから何か出来ないかなって」
恵美はしばらくポカンと口を開けていたが、やがて目の前の光景が現実であると実感したのか、糸が切れたように涙を溢した。
「全くもう……こういうのは子供達のために使ってあげてよ」
さっきまでの探偵ムーブは何処へ行ったのやら。号泣する恵美とは対照的に、俺は面白おかしくて笑ってしまう。照れ隠しに頬を掻いて、彼女に向き直る。
「これからも宜しくね、恵美」
そういえば、過去にもこんなことを言ってたっけ。
既視感に囚われる中で、宝石の中に広がる夜空が眩く光った。
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