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悟志とは大学のテニスサークルで知り合った。テニスサークルとは言っても、活動の半分はお出かけや飲み会であるようなもので、恵美も特にテニスが好きということはなかった。悟志は入学当初から髪を黄色に染めていてよく目立ち、テニスには全く興味がないにも関わらず、遊びや飲み会ではいつも話の中心にいるような人だった。恵美もその自由さに惹かれて、悟志とよく話すようになった。
何回目かのデートは、大きなテーマパークだった。出口付近のグッズ売り場で、このキャラがお互いに似てる、似てないで盛り上がった後、帰り道で、悟志が将来の話を振ってきた。
「恵美は何になるん?」
「んー、とりあえず公務員を目指すのかなぁ。まだ何も決めてない」
「地元で?」
「ううん、こっちで。地元に閉じこもるのは嫌」
「そっか」
興味があるのか怪しい相槌を打った後すぐ、俺は、と続けた。
「俺はやっぱ海外に行ってみたいんだよね」
「海外の会社に就職するってこと?どこの?」
「分かんない。アメリカとか。日本の会社だって、今は海外で勝負する時代だし。それに人生一度しかないんだからさ、広い世界が見たいじゃん?俺はでかい人間になりたいんだよ。恵美はアメリカ行きたくない?」
「行きたい。ジャスティン・ビーバーに会いたい」
悟志は留学も視野に入れているという。
本音半分、持ち上げ半分で、すごいね、と恵美が言うと、悟志は言った。
「海外って言っても人は人なわけだから。余裕でしょ」
余裕でしょ、は当時の悟志の口癖だった。
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