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その後も交際は続き、大学卒業を機に、二人は同棲を始めた。
悟志は海外ではなく、関東にある食品メーカーに就職した。就職活動中、悟志が恵美に弱音を吐くことは滅多になかったが、苦戦していることは見て分かった。悟志は在学中に2週間のオーストラリア留学を行なっていて、真っ黒に日焼けして帰ってきた様は面白かったが、何を得たのか、就職にどう繋がったのか恵美には分からなかった。
恵美も同じく関東で、地方公務員になった。大学の4年間で強く心を惹かれる仕事には出会わなかったが、悟志との仲は順調に深まり、なおさら地元に戻る選択肢は無くなった。
就職して1年もすると、お互いに忙しくなり、他愛のない会話が減り、代わりに仕事での愚痴を言い合うことが増えた。
かつてアメリカまで広がっていた二人の世界は、だんだんとその範囲を狭めていった。
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