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スマホが震えた。
なにかを期待してメールアプリを開くと期待のできない実家の母からのメールだった。
またお見合いを勧められたらキレてもいいかしら、と菜摘は思う。やたらと勧めてくるのだった。
が、文面に菜摘は動揺した。
『今日、菜摘のこと訪ねてきた外人さんがいたんだけど。日本語すごい上手なの! しかもイケメンで』
生憎、外国の血筋の知り合いはいない。思わず浮かんだのは日本人離れした皐月だった。取引先で外国の人と間違われて日本語を褒められる日本人。
だとしても。
どうして実家がわかったのか不思議だ。
と、菜摘は顔を顰めた。
菜摘の実家はわかりやすい。
田舎の街に似合わず一軒だけある『甘屋』という洋菓子屋だった。
皐月にその話をしたことは数々。覚えていたなら簡単に見つけられる。
『お母さん、その人なんて名前?』
『サツキさんていう人』
『それ日本人だから』
『新しい住所教えといたよ』
まさかのまさかだった。
しかも、普通住所なんて教えないと菜摘は思う。なんて田舎クオリティ。
でもわたしを訪ねてきたんだ……。
それから、ぼんやりと生きていてよかったと思った。
でもきっと、もう縁のない人だと思う。違うかしら?
恋しかった人にあげられる言葉は文句しかないように感じる。
そういえば、いつか菜摘に世界中を見せてやりたいとよく言っていた。下見に行ったのかしら、と思ってみたところで、音信不通2年間は酷いと思う。
とはいえ、そういう菜摘も引っ越しをしてしまっていた。
今日実家に行ったなら、うちに訪ねてくるのは明後日以降のはず。
菜摘の実家は山の中にあるど田舎だ。今住んでいる場所からはどういう交通手段を使っても丸一日は必要だった。
本当に会いにくるのかしら。
素朴に疑問だった。
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