雨上がりの恋人

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 なんのために会いにくるのだろうと考え込んでしまったら、お風呂でのぼせた。  バカだなあ、家は変わったけれど会社は変わっていない。会社に訪ねてきたら部署のみんなもきっと喜ぶのに。  皐月は明るくムードメーカー的なところがあった。みんなに可愛がられていて、今でも職場で話題に上る。仕事もできたし、辞める時はみんな必死に引き留めた。  それでも見たい世界があったのだから、やっぱり自分は要らないんじゃないかと菜摘は思った。  洗面所で化粧水を染み込ませながら、やたらと自分の肌が気になった。2年経って30歳になったから、30代の肌なのだと思う。  2年前はまだ20代だったから肌もきっと20代の肌。そう思うと、2年がとても長いように感じる。  お若く見えますね、とよく言われるということは、実際は若くないということだ。  2年間で自分に起きた変化がなにものかはわからないけれど、変わったに違いないことは確かだと思う。そうだとしたら皐月に会いたくないような気がした。  今日、ちゃんと眠れるかしら。  なにかよくわからない不安に襲われそうだった。  皐月だってきっと変わった。  でも菜摘が好きなのは2年前までの皐月だ。  よく海外に行くと人生観が変わるというけれど、本当にそうなら、皐月は菜摘が好きな皐月じゃなくなっているかもしれない。  そうしたら、文句を吐いたところで仕方なくなってしまう。
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