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「あの後、ボクチャンさんは大丈夫でした?」
「お、おう。なんとかな」
「そうですか」
僕が去った後の昨夜の事、めちゃくちゃ気になるけど、根掘り葉掘り聞いたりしない。
二人きりのエレベータ。少し形だけ触れ、踏みこまず話をすぐ切った。僕は僕の勘に賭ける。
昨日の今日で最後までしてないはずだ。エロ大好きな人なんだろうけど、この人は漢気が有って、先輩後輩の絆を大事にするタイプだ。
最初は純粋に困ってる後輩を助けてあげようとしたんだし。方法はどうであれ。関係を急に変えたり出来る年代でもない。
「……ケツ穴って、そんなに気持ち良いもんなんかな……」
「?!」
ボソッと小声、だけどはっきり隣から聞こえてきた。
階数表示モニタの天気予報をぼんやり見てた僕は、驚いて浅黒い横顔を凝視した。
何考えてんだこの人は? 煩悩口にだしちゃってるよ! 僕が話切り上げたもんだから、脳内で思い出と妄想が暴走してるんだろうか? だけど社内だよ? 朝だよ? 昨日反省したんじゃないの?
そういうところだよ! エロ後輩って僕がセンス被ろうが呼び続ける所以! 揺るぎないあだ名!
でもまさか、こっち側のそっち側にも興味持ち始めてただなんて。無意識だとしてもそのエロ探究心に感謝。
よし、一か八か。
「試してみます? 僕、貴方の為なら勉強しますよ。絶対誰にも言いませんし、絶対的な味方で、相棒ですから」
僕はにっこり笑顔を作り、ほっぺの横に二本指を立て、指をくいくいリズミカルに動かしてみた。
エロ後輩は無意識にトンでもな事を口走っていた自分自身と、その独り言を拾ってトンでも返事をした僕に驚いて、小さく飛び上がった。エレベータが揺れた。
「ううう宇田ちゃーん、じょうだん上手いんだねーうははははー」
二人の変な笑い声が密室に渦巻いて、扉が開いた途端エロ先輩は飛び出していった。
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