AIKO Part3

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「愛ちゃん英語出来るんだよな?これ訳してくんない?」  勤務先のリゾートレストランの中華料理の料理長は手品が趣味で、アメリカの有名マジシャンのマジックのタネ明かし本を入手したという。なんとか頑張ったがやはり読めず、語学留学経験のある愛子に助けを求めてきた。 和食の料理長と違っていつも優しい中華料理長の頼み事に、ウェイトレスの愛子は翻訳ぐらいAIにやってもらってくださいと言えなかった。料理長はメカに弱いオジサンなのだ。 まず愛子はその文書が本物なのかに疑念を抱いていた。 どんな経路でいくらで入手したのかは知らないが、USAのトップマジシャンのタネ明かしが、リゾートといえば聞こえがいいが電波も怪しいこんな山奥にまで流出してくるのか?タネが知られたらマジシャン商売あがったりではないのか?  とりあえず翻訳機にはかけたが、出てきた文章を愛子が読んでもタネがよく理解できない。 あまりに特殊な専門領域なので何か足りないところがある模様。 中学から所有する英和辞書を自分の手でめくって訳したらやっと筋が通った。学生ビザでアメリカに5年いたのは伊達じゃない。 単語には複数の意味があるからどれを選ぶかでまったく変わることがある。 タロットカードの読み方のようなものだな。愛子は高校時代にタロット占いも齧っていた。相手を見て真逆の読みをもするのが占いの真骨頂。 かくしてそのマジックのタネは一応解明できたのだが、 このとおりに滞りなく実現されたとしてマジックが起こり得るか? という思いが愛子には残っていた。 愛子の脳内でシミュレーションを行った結果、それがリアルに成立するのは 不可能と言わざるを得なかった。
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