ルーティン

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 いつものように、作った嬌声をあげていると、いつの間にかパジャマを脱がされていた。その手際だけはよくなった気がする。    夫はしばしば「自分は女性経験が豊富だ」とほのめかすことがあったが、多分それは誇張だろうなと思っている。だって、本当に素人の女性を複数抱いていたら、私のこの喘ぎ声が本物かどうかくらいわかるんじゃないだろうか。  プロの女性か……もしくは、アダルトビデオでの学習の「経験が豊富」、なんだろう、きっと。  私は感じている振りをしながら、ちらりと夫を見上げた。  順番的には、そろそろ挿入だ。  避妊なしの、性行為。  夫との行為が私にとって初めてのセックスだったことに気づいた夫の、勝ち誇ったような顔が今も忘れられない。  自分が組み敷いた女を征服しているという高揚した顔。自分だけがこの女の全てを知り尽くしているのだという顔。  それは、今も変わらない。  私はただただこの行為が一秒でも早く終わるように願いながら、夫の動きに合わせて声を出した。  そして、今日も考える。  も今、こうして他の女を抱いているんだろうか。
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