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夏だ。 高温多湿の、日本の夏。 ミーンミンミンミン… ジージジジジジ… 外で蝉が鳴いている。 エアコン完備で良かったとしみじみ思う。 「前から思ってたんだけどな?」 「うん?」 パチリ、黒い石を白に裏返しながら俺の声に首を傾げるのは、ティーこと、矢吹程佳。 3時間目が終わったところの休憩時間。 小腹が空いたと自販機で買った、小さいチョコミントのアイスを齧っている。 共食い? いや、こいつはミントじゃないか。 「ちょいちょいイントネーションが関西弁なのは何でだ?」 「あ、やっぱり入ってる?」 「やっぱり?」 うん、と頷く。 俺も白い石を黒に返した。 「オレ、国の研究物って話したっけ?」 「?うん、それも良く分かってねぇけどな」 「えぇ、何で?」 「いや、お前普通に人じゃん。頭にアロマティカス生えてるだけだろ?それで研究『物』って言われても理解し難いし。人権ってあんのか?」 「さぁ?知らない」 「いや、そんな命に関わる一大事を他人事みたいな…」 興味無さげに話すから引いた。 パチリ。あ、そこはヤバい。 「だって国の研究物だし。もし拘束されても逃げようが無い」 「何で?普通に学校行ってからそのまま逃げれば良いだけじゃねぇの?」 「GPSだか発信機だか知らないけど、何か埋め込まれてるらしいよ?」 「えぇ……」 更に引いた。 じゃあ、ここか。パチリ。
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